経営者が知っておきたい銀行融資の条件変更・リスケを交渉する3つのポイント!

どうしても会社の資金繰りが悪くて、銀行への融資返済のめどが立たない場合は返済条件の変更(リスケジュール/通称「リスケ」)を申し出る必要があります。有名なものとして、元金返済の棚上げや、期日に一括返済するバルーン返済などがあげられます。

 

もちろん、銀行にストレートに条件変更の交渉をしても簡単には応じてくれません。銀行に返済の条件変更を認めてもらうためにはそれなりの手続きや交渉が必要です。

 

本記事では銀行融資の返済が困難になった際に、返済条件の変更を交渉するうえで経営者が知っておくべき3つのポイントを説明します。

 

 

条件変更(リスケ)とは?

銀行融資に関する条件変更(リスケ)とは、返済方法の変更を意味します。

リスケとは、リスケジュールの略であり、直訳すれば、融資の返済計画を再度組みなおすという意味になります。

 

通常、銀行融資を受けた際に決められた返済スケジュールを変更することは認められません。

 

しかし、借入人の業績悪化や、何らかの理由による資金繰り悪化を原因として、現状の返済が続けられなくなってしまうことがあります。そんな時に、銀行に相談して返済方法を変更してもらうのが条件変更(リスケ)というわけです。

 

なお、条件変更という場合には、通常、現在の返済条件を緩和してもらうことを意味しますが、以下のようなパターンがあります。

・バルーン返済

・返済期間の延長

・元本の一部免除

 

リスケで最も多いケースがこの「バルーン返済」です。

バルーン返済とは、元本返済の一部、もしくは全額を一旦停止して、将来の返済時に上乗せして支払うというものです。

仮に、返済残期間が12ヶ月、借入残高1,200万円、毎月100万円の返済(元本)を行っているケースで考えてみましょう。

 

この時、バルーン返済では、元本返済の一部を後送りにします。例えば、現在の毎月の元本返済を100万円から0円に減額します。その分、12ヶ月後の最終返済期日に、1,200万円を一括返済することになります。

 

通常、この1,200万円の一括返済も困難であると考えられますので、最終期日到来時には、再度分割返済の契約を結ぶことになります。

 

次に、考えられるケースが「返済期間の延長」です。

前述の例では、残期間が12ヶ月であったものを、24ヶ月などに期間を延長することになります。

その分、毎月の元本返済を100万円から50万円に減額することができます。

 

最後の元本残高の一部免除は、基本的には認めてもらえる可能性の少ない方法になります。単純に元本返済を免除してもらえれば返済は楽になりますが、それは銀行にとっての損失となりますので、認めてもらうのが難しいパターンとなります。

 

 

銀行は条件変更に応じてくれる?

まず、冒頭で銀行に条件変更に応じてもらうことが難しいという説明を示しました。しかし、必ずしも不可能なわけではありません。銀行の立場からこのことについて説明します。

 

 

リスケは銀行の損失になる

銀行が融資の返済方法に関する条件変更(リスケ)に応じたくない理由の1つに引当金の問題があります。

銀行は、融資先の信用状況に応じて、各融資先をランク付けしており、このランクのことを「債務者区分」と呼びます。

 

債務者区分では、融資先に特段の問題が無い状況のことを「正常先」と呼びます。そこから、信用力が悪化するにつれて、要注意先、要管理債権、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先と債務者区分は推移していきます。

 

通常、リスケを行った融資先は、正常先から「要注意先」もしくは、「要管理債権」に変更されます。この時、銀行内部では、対象となる融資に対して「引当金」を計上することになり、銀行決算上の損失として扱われます。

 

つまり、銀行では、融資先の条件変更に応じると、決算上の利益が減少してしまいます。そのため、極力条件変更には応じたくないのです。

 

 

銀行にもリスケのメリットがある

しかし、銀行にとって条件変更が良くないことばかりという訳でもありません。銀行にとって、条件変更によるメリットが生まれることもあります。

 

融資業務において、銀行が一番避けたいのは、取引先が倒産したりして、貸していた元本が回収できなくなることです。融資の貸し倒れになると、引当金を計上するどころではなく、実際の損失になってしまいます。

 

そして銀行が資金繰りの厳しい会社に対して、完全に条件変更の交渉をシャットアウトしてしまえば、会社は資金繰りが厳しくなって、本当に倒産してしまうこともあります。

 

このときに銀行が取りうる最良の手段は、立ち直りそうな会社と、立ち直らなさそうな会社を区別して、立ち直りそうな会社に手を差し伸べることです。

 

立ち直りそうな会社に手を差し伸べ、条件変更に応じれば、そこから経営状態を立て直して、元本も利子もきちんと長期的に回収できるようになるかもしれません。また、取引先が正常化した後、返済条件の変更(緩和)に応じたことを取引先が恩に感じて、より銀行側が有利な立場で交渉できるようになることも考えられます。

 

 

金融庁の指導も影響

また、銀行の自主的な行動だけでなく、外部環境も影響します。銀行を指導する立場にある金融庁も、銀行に対して条件変更に応じることを求めることがあります。銀行運営に対して金融庁の指導は大きな影響を与えます。

 

政府の金融政策及び金融庁の指導について注目するべきは平成21年12月から平成25年3月末まで効力があった「中小企業金融円滑化法」です。

 

中小企業金融円滑化法はリーマンショックからの不況による中小企業の倒産を防ぐ法律で、金融機関に経済的合理性があると判断される場合は、銀行に返済条件の変更に極力応じるように促していました。

 

この時、銀行は、金融庁からの指導や、圧力を警戒して、条件変更の申し出に一律応じるようになりました。そのため、本来、再生見込みがない企業なども延命されることとなり、銀行に条件変更を申出すれば、誰でも許可してもらえると言われていました。

 

この法律は時限的な措置として制定された法律なので現在は終了しています。しかし、それでも金融庁はこの指針を維持し、金融機関は引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更などに努めるべきだという指導を行っています。

 

そのため、円滑化法の効果があった時ほどではありませんが、銀行は、現在でも条件変更に対して、前向きに取り組むように求められています。

 

以上のようなことから銀行は、融資の条件変更によって経営が立ち直る会社については、条件変更に応じる余地があるということがわかります。ただし、もちろん条件変更をして欲しいと言えば、すぐに応じてくれるわけではありません。

 

ビジネスローンの疑問

 

条件変更を成功させる3つのポイント

銀行の融資返済が困難となってしまった時に、銀行と返済条件変更(条件緩和)の交渉を行う際の3つの重要なポイントについて以下で説明します。

 

 

1:事前準備を整える

銀行融資に条件変更を応じてもらうために、まず1つ目のポイントとして事前準備を整える必要があります。

 

 

交渉できる環境を整える

時間はかかりますが、条件変更交渉できるように環境を整えることが大切です。だいたい3~4か月かけて、銀行と交渉できるように最低限の準備を行う必要があります。

 

まず、大切なのは預金口座の移動です。銀行に対して条件変更交渉をはじめると、交渉する銀行に置いている預金口座の出金を停止されることがあります。さらに、口座に残っている預金残高を返済に充当される可能性まであります。

 

メイン口座を止められると、企業の営業に大きな支障が出ます。場合によっては、取引先に対する支払いが出来なくなり、営業を継続できなくなることもあります。口座の移動は、そのための対策と言えます。

 

具体的には、借り入れの無い銀行の口座を用意します。そして融資を受けている銀行口座の資金を、借り入れの無い銀行口座に移しておき、売上などの入金口座も公共料金や家賃などの支払い口座も借り入れの無い銀行口座に変更するようにします。

 

担保になっていない預金も解約して借り入れの無い銀行口座に移した方が良いでしょう。

 

また、条件変更交渉を始めると手形割引ができなくなる可能性もあるので、手形割引を使用する可能性がある企業は、手形割引に応じてくれる銀行も確保しておいた方が良いでしょう。

 

ちなみに預金口座の移管手続きを行っているときも、条件変更を考えていることを説明してはいけません。銀行からなぜこのようなことを行っているか聞かれた場合はうまくかわしてください。

 

条件変更の交渉に入ると、正常化するまで新規の融資を受けてくれない可能性が高くなりますので、資金が必要な場合は前もって融資を受けておいた方が良いでしょう。

 

 

交渉の準備をする

 

口座移管の手続きと並行して、条件変更交渉の準備を行います。融資の返済条件変更には、経営改善計画書を作成する必要があります。銀行は、融資先がどのような方法で事業を再建するのかを、「計画書」で提出することを求めます。

 

また、銀行を指導する金融庁も、条件変更に応じるための条件として、経営改善計画書の提出を原則としています。

 

条件変更の交渉をしたり、経営改善計画書を作成してくれるコンサルタントなども存在します。経営の再建計画や、事業計画の作成方法が解らない経営者は、このような経営コンサルタントを活用してみるのも良いでしょう。

 

経営コンサルタントの中には、条件変更や、事業再生の経験が豊富なところもあり、銀行との交渉方法など、様々な支援を行ってくれるところもあります。

 

<中小企業向けの再生コンサルタントの例>

 

 

経営改善計画が認められる基準について、中小企業の場合は厳しい状況を想定しても5年以内に債務超過を解消して黒字化するような計画を立てる必要があります。

 

また、経営改善計画が80%以上計画通り推移すると認められれば債務超過を解消して黒字化するのは10年以内であっても大丈夫です。

 

交渉の準備は経営者本人が主体的に参加して、うまく外部業者と連携をとりながら厳しめに見積もった計画を作成してください。

 

 

2:平等に交渉する

また、ポイント1の準備が完了すれば、いよいよ銀行との条件変更に関する交渉に入っていきますが、複数の銀行から融資を受けている場合、それぞれの銀行に対して平等に条件変更の交渉をしてください。

 

銀行同士でも、会社について情報共有をしている可能性が高いので、特定の銀行だけに有利な条件で交渉を行っていると、他の銀行にばれてしまい、その後の条件変更を断られるケースがあります。

 

金融機関と条件変更の交渉を行う場合は、各銀行に対して公平・公正な態度で行うのが原則です。銀行によって差をつけずに一律の条件で交渉を行う必要があります。

 

 

3:粘り強く交渉する

平等に銀行と条件変更交渉をしていてもすぐに条件について折りあいがつくわけではありません。粘り強く銀行と条件変更交渉をするのがポイントの3つ目です。

 

おそらく銀行は、すぐに融資を返済してもらいたい、リスケ交渉に応じても厳しめの条件を突き付けてくると考えられます。一方で、企業側としても銀行の条件を呑むと経営再建が立ち行かなくなる可能性があるので妥協はできません。

 

また、担当者レベルでは決済できないことも多いので、支社の上役や本部などと担当者が相談する時間を加味するとどうしても交渉には時間がかかってしまいます。

 

ポイント1の準備でしっかり銀行口座から資金を抜いておけば、強制的に口座から資金が返済にあてられる可能性はありませんが、それでもタフな交渉は神経をすり減らします。

 

しかし、銀行側のペースに惑わされずに、きちんと会社側の条件を伝える必要があります。

 

以上のように、条件変更交渉にかかる準備や実際に条件変更交渉が成立するまでの期間を考えれば、条件変更には時間がかかることがわかります。

 

条件変更交渉を成立させるためにはそもそも常日頃からきちんと資金繰りについてチェックしておき、早めに条件変更交渉の判断を行った方が良いです。

 

 

ファクタリングを活用

条件変更の交渉に時間がかかると、新規融資も受けられなくなり、資金繰りに困ってしまうことがあります。しかし、条件変更中や、条件変更の終了後間もない場合だと、新規融資に応じてくれる銀行はほとんどありません。

 

こんな時に資金調達に活用できるのがファクタリングです。

 

ファクタリングは、条件変更(リスケ)中や、赤字、債務超過、税金滞納中といった状況でも利用できる可能性のある資金調達方法です。

 

ファクタリングでは、商取引で発生した売掛金を、ファクタリング会社に売却することによる資金調達方法です。こういった点では、銀行で行う「手形割引」にかなり似た取引と言ううことができます。

 

条件変更の交渉中、もしくは、リスケ後の状況において資金調達が必要となった場合には、ファクタリングを検討することをおすすめいたします。

 

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銀行との付き合い方

銀行は「晴れた日に傘を貸して、雨の日にとりあげる」というたとえがあります。銀行側の融資スタイルを皮肉った文言ですが、確かに銀行にはこの傾向があります。

 

ただし、銀行もきちんとした取引実績がある会社や、常日頃から経営状況をきちんと報告する会社、経営改善計画をきちんと提出した会社にはきちんと条件変更を検討します。

 

銀行も経営再建ができる会社を倒産させて債権を回収できなくなる位ならば、条件変更に応じた方が良いという判断を行います。

 

一方で、銀行を信じすぎて、預金を融資元の銀行に残したままリスケ交渉を行うと預金口座の出金停止をされる可能性があるので注意が必要です。銀行は一概に敵、味方とは判断せずに、うまい距離感で付き合うようにしてください。

 

<関連:融資を引き出す銀行との付き合い方>

事業主必見!!借りたい時に借りられるようになる銀行との付き合い方

 

まとめ

以上のように銀行融資の条件変更のポイントについて説明してきました。きちんとした手続きを踏めば銀行はリスケに応じてくれないわけではありません。

 

今回紹介した、「交渉の準備をする」「平等に交渉する」「粘り強く交渉する」という3点に気をつけながら銀行との条件変更交渉を成功させてください。

 

 

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