借金返済に対する「過払い金」という言葉を聞いたことのある方は多いでしょう。
結論を言えば、「過払い金」があると、現在の借金残高を減少できたり、過去に返済した借金の一部を取り戻すことができます。
「借金の返済が重い」、「借金が減らなくて悩んでいる」、「お金に困っている」という方、自己破産などの債務整理を考えている方も、まずは「過払い金」の有無を確認されてみてはいかがでしょうか。
過払い金があれば、借金問題を解決できる可能性が高まります。
「借金返済を多額に行って来た方」は、「過払い金」が発生していないか確認されてみることをおすすめします。
借金の過払い金とは?
過払い金とは、一言で言えば、「貸金業者」に対する借金・利息の払いすぎです。
貸金業者(消費者金融、信販会社、クレジットカード会社など)には、法律で、受け取って良い「金利の上限」が定められています。
そのため、法律で定められた金利を超えて、利息を受け取ってしまうと「違法」になります。
過払い金とは、この法律上の制限を超えて支払ってしまっている利息を指します。払い過ぎたお金なので、「過払い金」という訳です。
利息の上限とは?
なお、貸金業者が受け取って良い利息の上限は、「利息制限法」という法律で規制されています。
利息制限法は、過払い金を考えるうえで、無視することのできない重要な法律です。利息制限法の上限となる利息の目安は以下です。
利息制限法の上限
借入額(元本借入額) | 金利の上限 |
元本が10万円未満 | 年20% |
元本額が10万円以上100万円未満 | 年18% |
元本額が100万円以上 | 年15% |
利息制限法は「借入額(元本残高)」によっても異なります。借入額が100万円未満の場合は、金利の上限は18%(年率)となります。
過払い金が発生する理由
大手消費者金融など、正規の貸金業者であっても「過払い金」が発生している可能性は十分にあります。
しかし、なぜ「過払い金」が発生してしまうのでしょうか。過払い金が発生する理由から確認しておきましょう。
過払い金が発生している理由に、「グレーゾーン」と呼ばれる金利があげられます。
現在、貸金業者が受け取ることのできる金利は、前述のように「利息制限法」で規制されています。
しかし、以前は、この法律の規制に「曖昧さ」がありました。
利息制限法では前述のように、金利(年率)の上限が定められていましたが、この上限金利を超えて受け取っても、特段の「罰則」が無かったのです。つまり、民事上は法律違反だけれども、「刑事罰」の対象になることはありませんでした。
そして、以前は「出資法」という別の法律があり、出資法では、29.2%を超えて利息を受領すると刑事罰の対象になり、「違法」とされていました(現在は、出資法は廃止されています)。
出資法に違反すると、「刑事罰」の対象にもなっていました。そのため、貸金業者の間では、「出資法」は守らなければいけない法律として扱い、「利息制限法」を超えて金利を受けとることは「許されている」ものとして扱われていましたのです。
年率18%(借入元本100万円以上なら15%)~年29.2%までは、利息制限法は違反するけども、出資法は守っている部分として、利息を受け取っても「民事上は違法ながら、刑事罰の対象にならない」部分とされていました。
そして、実際には金利を受け取っても罪に問題の無い範囲として「グレーゾーン金利」と呼ばれていたのです。
多くの貸金業者は、「グレーゾーン金利」は受け取っても良い部分というのが常識でした。
しかし、貸金業者を取り巻く環境は大きく変わりました。2010年の改正貸金業法の施行により、グレーゾーン金利は撤廃され、出資法も無くなったのです。
この改正により、利息制限法を超えて金利を受け取ることは「刑事罰の対象」になるものと改められ、過去を含めて、利息制限法の上限を超えて受け取った金利は「無効」として、返還を求められた場合には、「返還する」必要があると決められたのです。
過払い金は取り戻せる
2010年に改正貸金業法が施行されました。その結果、改正貸金業法が施行されるまでに貸金業者が受け取っていた利息についても、「利息制限法を超える部分(過払い金)は、無効であり、返還を求めることができる」とされました。
貸金業法改正前の過払金であっても、遡って取り戻すことができることになったのがポイントです。
つまり、過払い金は「取り戻せる」ことになったのです。
過払い金の重要な点は、「改正貸金業法」の改正後のみでなく、それ以前に支払っていた部分も、返還の対象になるとされたことです。
過去何年もの期間に渡って、グレーゾーン金利を受け取っていた貸金業者は、多額の返還義務を負うようになりました。
但し、あくでも返還の必要があるのは、返還請求を受けた場合に限られています。債務者が過払い金に気付かず、返還請求をしなければ、返還する必要はありません。
過払い金の返還請求方法は?
過払い金の額が、その時点の借入残高を下回る場合、過払い金によって、借金返済を行ったものとして、「借入残高」を減らすことになります。
一方、過払い金が、借入残高を上回る場合(既に借入が完済されている場合も含む)は、払い過ぎた過払い額を返還してもらえるように請求することになります。
過払い金による借入残高の減少や、過払い金請求は、貸金業者と個別に交渉したり、裁判を介して行う必要があるため、100%確実に取り戻せるという訳では無いことを知っておいた方が良いでしょう。
確認した方が良い人
貸金業者から、過去お金を借りていたことのある方、もしくは現在も借入がある人は、それぞれ過払い金が発生している可能性があります。
そのため、過払い金の疑いがある人や、心配な方は「過払い金の有無」を確認した方が良いことになります(確認方法は後述します)。
しかし、その中でも、特に、過払い金の可能性が高く、急いで「過払い金」の有無を確認するべき人がいます。その特徴をご説明していきましょう。
①2010年以前に借入した人
現在、過払い金が発生している可能性の高い方は、「2010年以前に借入したことがある人」(既に完済した人も含みます)になります。
2010年というのは、改正貸金業法が施行された年です。大手消費者金融など、貸金業者の大部分は、改正貸金業法の施行により、利息制限法を上限とする金利に、貸出金利を変更しています。
この金利を超えてしまっては、「刑事罰」の対象となるように改正されたためです。
そのため、2010年の貸金業法の改正以降、過払い金が発生する可能性は大幅に低下しており、特に、大手の貸金業者からの借入であれば、ほぼ過払い金は無いと言って良いでしょう。
一方、2010年以前は、利息制限法を超える金利を請求していたケースも多く、現在の大手消費者金融や、クレジットカード会社、信販会社などであっても、過払い金が発生していた可能性は大いにあります。
そのため、2010年以前に借入や、返済を行ったことのある方は、過払い金の有無について、確認された方が良いことになります。
②借金完済後10年以内
過払い金を請求するためには期限があります。過払い金があれば、いつまでも請求できるというわけではありません。
過払い金の返還を請求できる期限として「時効」があります。
過払い金の時効は借金を完済してから10年と定められています。
そのため、例え、過払い金が発生していたとしても、対象となる借入を完済してから10年以上経過してしまっている方は、過払い金を取り戻せる可能性は低くなってしまいます。
以上をまとめると、過払い金の有無を確認した方が良い方は、「2010年以前に借入をしたことがあり」、「対象となる借金を完済してから10年以上経過していない方」となります。
過払い金請求の方法
以降では、実際に過払い金の有無を確認したり、その後、貸金業者に対して、過払い金返還請求をするためのポイントについて解説します。
過払い金の有無を確認する
前述の2つの基準にあてはまる方は、1度、過払い金の有無を確認されてみるのが良いでしょう。
もちろん、全ての方に過払い金がある訳ではありませんが、特に大きな費用がかかる訳でもありませんし、過払い金があるなら是非、取り戻したいものです。
取引履歴を請求・確認
過払い金の有無を確認するための最も基本的な方法は、借入していた貸金業者から取引履歴を取得して、過払い金の有無を確認する方法です。
取引履歴とは、実際に貸金業者からお金を借入して、その後の各返済に関して、それぞれの返済毎に、日付、金額などの詳細を記録したデータとなります。取引履歴には、実際に借入した額や支払った額だけでなく、利息と元本の内訳や、金利(何%)についても記されています。
そのため、取引履歴を確認すれば、ご自身の借入に対して、何%の金利が適応され、いくらの利息を支払っていたのかを確認できます。
取引履歴は、貸金業者に対して個別に開示請求することができます。
借入人からの取引履歴の開示請求は、貸金業法でも、貸金業者の義務として定められています。そのため、借入人からの要求を拒否することはできません。
実際の開示請求方法は各社によって多少異なりますが、各貸金業者が設けている電話窓口(コールセンター・お客様相談センターなど)に電話するのが良いでしょう。
会社によっては、「開示申請書」の提出が必要なこともありますが、電話窓口に連絡すれば、必要となる用紙を送付してもらうことができます。
用紙を記入・提出して、本人確認資料(運転免許証など)の写しを添付すれば、1~2週間程度で取引履歴を開示してもらうことができます。
なお、取引履歴を請求する場合には、「契約後から、現在に至るまでの全ての履歴」について請求するようにして下さい。直前だけの履歴や、一定期間に限定して取得すると、過払い金の有無を確認できないこともあります。
過払い金額の確認
取引履歴を確認した結果、過払い金があったことが判明した場合には、実際の過払い金額を計算する必要があります。
そのために必要となる計算が、「引き直し計算」です。引き直し計算とは、過払い金(払い過ぎた利息)を、利息ではなくて元本返済へ充当したものとして、取引履歴を計算しなおす方法です。取引履歴に記載されている内容に比べ、借入元本が前倒しで減少することになるため、さらに利息が減少することになります。
引き直し計算の結果、「減少するべき借入元本」、もしくは、「返還を受けるべき過払い金」を計算するのです。
過払い金請求の交渉
「過払い金額」が特定できれば、次に、借入先である消費者金融などの貸金業者と、任意で交渉することになります。過払い金請求では、必ずしも相手となる貸金業者から100%の返済を認めてもらえる訳ではありません。
相手となる貸金業者の規模や、資金力にもよりますが、返還すべき過払い金額を「交渉で値切ってくる」ことも多々あります。金額に納得できない場合には、裁判を起こして請求するということが必要になります。
専門家に相談する
取引履歴を請求して確認するだけなら、契約者本人でも対応でき、必ずしも弁護士などの専門家に依頼する必要はありません。
しかし、弁護士や、司法書士を活用すると大変便利です。なかには、事前相談や、取引履歴の開示請求を含め、「過払い金の有無」を無料で確認してくれる弁護士などもいます。こういった弁護士などを活用すれば、手間暇も削減できますし、上記のような「引き直し計算」も専門家が代わりに行ってくれます。
弁護士などに依頼するメリット・デメリットについて整理しておきましょう。
専門家に依頼するメリット
- 取引履歴の開示請求から、過払い金有無まで一貫して対応してもらえる
- 過払い金の額を計算する「引き直し計算」も行ってもらえる
- 過払い金請求の交渉や裁判に対応してもらえる
- 個人で交渉する場合に比べ、成功する可能性が高い
専門家に依頼するデメリット
- 成功報酬や、着手金が必要になる(費用がかかる)
実際に、貸金業者に対して過払い請求を行う場合、「引き直し計算」と呼ばれる方法で過払い金額を特定し、直接、貸金業者と交渉する必要があります。
これらの対応は、過払い金請求に慣れていない素人には、かなり難しい対応となります。
そのため、弁護士や司法書士に相談した方が、成功する確率は高くなると言えます。
▼無料相談可能な弁護士
- アース法律事務所/債務整理・破産・個人再生・過払い金請求など4.8
☆元裁判官の弁護士が借金問題を解決
☆初回相談無料
☆全国対応可能
☆個人再生、任意整理、自己破産、過払い金請求などに対応
過払い金請求はした方が良い?
過払い金請求で、過去に払い過ぎた借金の一部を取り戻せる可能性があります。
そうなれば、過払い金請求は「是非」利用した方が良い手段と判断しがちですが、過払い金請求にはメリットとデメリットがそれぞれ存在します。
過払い金を請求する前に、一度、メリット・デメリットを整理して、請求した方が良いのかを判断するのが良いでしょう。
過払い金請求のメリット
過払い金請求を活用するメリットは、当然ながら、「借金が減らせる」、もしくは「過去の返済の一部を返してもらえる」ことです。
借入を利用している方にとって、残高を減らせたり、返済の一部を返してもらえるメリットは非常に大きいでしょう。
過払い金請求のデメリット
過払い金請求のデメリットとしては、それ以降の新規借入が難しくなってしまうことでしょう。
「過払い金請求」は、金融機関の間では、1つの「債務整理」として認識されています。
債務整理とは、自己破産や、任意整理など、金融機関にとっては「望ましくない手続き」を指しており、債務整理を行った方への資金融資は行われなくなる傾向があります。
そして、個人信用情報にも、「金融事故歴あり」として記載されるようになるため、過払い金請求を行った対象借入先だけでなく、その他の金融機関にも知られることになります。
まとめ
2008年以前から消費者金融や、信販会社などの貸金業者からお金を借入していたことのある方には、「過払い金」が発生している可能性があります。
過払い金とは、金融機関に対して、必要以上に「払い過ぎている」状況を指します。
過払い金が発生している場合、借金の残高を減らせたり、過去返済分の一部を返してもらえる可能性があります。
払い過ぎた借金を取り戻すことのできる「過払い金請求」は重要な手続きです。
2010年以前に借入した借金があるなど、過払い金の可能性があるなら、弁護士や司法書士に相談して、過払い金の有無を調べてもらうのも良いでしょう。
過払い金には時効があり、返還請求するには期限があります。借金完済後、10年経過すると取り戻せなくなります。
可能性があるなら、早めに確認して、対応する必要があります。過払い金請求は、ポイントとコツをおさえて上手に活用するようにしましょう。
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